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精神科やメンタルケア、心療内科のサポートを受けている人が多いです。仕事で疲れたり、学業が大変過ぎたり、人間関係がうまくいかなったり、色々と理由があって精神的なサポートが必要になります。現代では、クリニックに通う人も多いです。ですが、いまだに精神科などに通っていることをオープンに話せない人がたくさんいます。うつ病と診断されて苦しい思いをしていても、家族にも言い出せない人がいます。精神科のおかげで困難を乗り越えても「精神科に通っている。」とは、言いにくいのです。
理由は人によって違いますが、「恥ずかしいから」と感じている人が多いかと思います。うつ病やパニック障害などのような精神疾患でメンタルケアを受けていたことが恥ずかしい、人に知られたくないと思う人がとても多いそうです。そのことを打ち明けたら、烙印を押されるのを恐れている人もいるのではないでしょうか。
フィンランドでは今、このような精神科や心療内科に関連する「社交的スティグマ(ソーシャルスティグマ)」をなくそうとしている動きがあります。精神科に行くことや心理療法を受けることが恥ずかしいことではなく、打ち明けてよいということです。もっとオープンなフィンランドになるために、社交的スティグマをなくそうと努力しているフィンランド人がいます。
きっかけは重大なハッキング事件
フィンランドでは深刻なハッキング事件が起きたことが2020年10月末に明らかになりました。
精神科やメンタルケアのサービスを提供している私立会社「Vastaamo」のサーバーがハッキングされ、人の個人情報や相談の内容が書かれた書類が抜き取られました。ハッキングが起きたのは2018年11月と2019年3月だったと推定されていますが、事情が初めて知られたのはつい最近、先月の10月21日頃でした。何万人もの情報が取られてしまいました。
ハッキングされた情報の一部はダークウェブサイト(闇サイト)で公開され、他のネットサイトにも一時的に載ってしまいました。この後、ハッカーから人へ「40ビットコインを払わないと情報を公開する」という脅しのメールが届き始めました。警察からは、絶対に賠償金を払わないでという注意喚起がされています。
会社の「Vastaamo」にも今年の9月末に賠償金のお願いが送られたようですが、支払いに応じなかったために、一般人を脅し始めたのだそうです。
大きな問題は個人情報や相談内容の流出
ハッキング事件は他のサイトでもたまにありますが、多くのサイトは定期的なパスワードなどを変更すればある程度は安心ができます。しかし、今回のメンタルクリニック「Vastaamo」の場合は、パスワードのような情報だけではなく、人の個人番号(日本で言うマイナンバーカード)や機密情報である相談内容も流出してしまったのです。
個人番号はフィンランドでは誰もが持っている人のアイデンティティーを証明できるものです。マイナンバーのようなもので、銀行口座を開くときやクレジットカードを契約するとき、病院に行くときなどにも使います。
多くの場面では個人番号だけでは自分だと証明できないのでそれほど悪用できるものではないですが、銀行口座なども紐づいています。お金が関係しているので、残念ながら店によってはインターネットでの支払いや買い物ができてしまいます。これを防ぐ方法は少しありますが、それでも不安が続いている状況です。すでに1万5000人ほどから警察への通報があり、悩んでいる人が大勢います。
しかし、問題は個人情報の流出だけではありません。
相談や療法を受けたのが知られて恥ずかしい人が多い
上でも述べましたが、精神科に通うことを隠す人がすごく多いです。仕事ではなおさら、友達や家族にも言えない人が多くいます。自分が1人では耐えきれないものがあることを他人に言うことが恥ずかしい、弱いと思われる、迷惑になると言う考えがあるのでしょうか。
このハッキング事件では、「Vastaamo」という私立のメンタルクリニックだけで通っていた人は何万人もいるとわかりました。フィンランドには、この会社以外にもメンタルケアが受けられる場所がたくさん存在し、国立病院でも相談を受ることができるので実際にメンタルケアを受けたことがある人の数ははるかに大きいと言えるでしょう。
メンタルケアを受けている人、受けたことがある人が多いという事実が存在しているにも関わらず、それを誰かに打ち明けることが珍しいのです。家族に言ったとしても、それ以外の人には内緒にする人がいます。バレてしまうのが、嫌なのです。
オープンになりましょう!という動き
悲しいハッキング事件をきっかけに、フィンランドでは今精神科のサポートやメンタルケアを受けていることに対しての社会的スティグマをなくそうという動きが行われています。
新聞や雑誌には、精神的な問題で悩んだことがある人の記事が以前より多い頻度で掲載されています。悩んでいる人がこれだけいるのだということを広めるためです。先日、心理療法士と話をしましたが、精神科に通う人は「私だけかな」と思っている人が数多くいます。「うつ病にかかったのは私だけで、私が人より弱いから」、「仕事が辛くなったのは私だけ、他の人はどんなに残業があっても耐えられるのになんで私だけが人より弱い」と思い込んでる人がいます。この思い込みをなくすために、他の人の経験を表に出しています。
SNSでも様々な活動がされています。フィンランドではとても広く使用されているフェイスブックでは、プロフィール写真に「私もサイコセラピーを受けたことがある」と言う文章をつける人もいます。インスタグラムにも、綺麗な写真を投稿するだけでなく、その綺麗な写真の裏にある闇について書いている人がいます。「写真を見たら私は幸せそうだと思うかもしれないけど、実際は心の病で辛い」と書き込んでいる人も見たことがあります。
今に始まったことではない
私は先週、人材で働いている心理学専門家のインタビューをしましたが、この事件の話もしました。およそ30年間くらい経験がある専門家ですが、この事件は、以前からフィンランド人が精神科に通うことを徐々にオープンに話せるようになっているのだそうです。
何度も出世して、高いとこに登った人でも、精神科に通っている人や精神科の治療のおかげで人生がもっとうまく行くようになった人が結構います。そして、その話を正直に自分から話す人が年々増えているのだそうです。
このような人にとっては、精神科に通ったことが恥ずかしいことではなく、自分の幸せのための大切な手段だったのです。通ったことは恥ずかしくないです。強いから通える勇気がありました。自分の人生をもっと幸せにする試みができたことを誇りに持っている人もいます。
精神科に通うことは恥ずかしくない
メンタルケアや心理療法などを受けていることや受けたことがある人は、それを恥ずかしいと思う人がたくさんいます。しかし、実際には全く恥ずかしいことではありません。みんなが自分の心の病や精神的な悩みについてもっとオープンに話せたら、他の人にとっても話しやすくなり、全体的に受け入れやすくなるはずです。もっとオープンなフィンランド、もっとオープンな日本や世界になればきっともっと生きやすくなると心から思います。
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