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新型コロナウイルス(COVID-19)がまだ世界中に感染拡大しているなかで、北欧のフィンランドでは全体的に普通の生活を取り戻してきています。マスクをしている人も比較的に少なく、感染者数も少ない傾向にあります。人口が多い首都のヘルシンキの街を散歩していてもコロナウイルスがあること自体を忘れてしまうほど危機感がありません。ここ最近国境の封鎖も一部地域で緩和され、外国人の観光客が少しだけ訪れているようですが、その外国人もフィンランドにいて「コロナの存在すら忘れる」という意見が多いようです。
なぜフィンランドはこんなに早くウイルスの抑制をすることができたのかということをフィンランド人の私が考えていきたいと思います。
フィンランドは今どのような状況なのか
そもそも、フィンランドの現在の状況はどうなのでしょうか。外出自粛をしている人はいるのでしょうか?レストランやその他の店は営業しているのでしょうか?
実は、フィンランドはほぼ普通の生活に戻っています。
フィンランド政府は3月末に緊急事態措置権限法を発令しました。この緊急事態でしか使えない法律は1ヶ月以上も前(2020年6月15日)に解除されました。フィンランドの中心部、ヘルシンキも入っているウーシマー県の封鎖もとっくの昔の話です。
イベントの開催が可能
緊急事態の法律が最も厳しかったときには、5人以上が集まることが禁止されていました。今は50人以下の場合は集まることは自由で、500人まででしたら感染防止対策がしっかりしていれば集まることができます。
さらに、コンサートのような公共でのイベントも感染防止対策が整っているという条件付きで開催できるようになっています。参加者が500人以上いても屋外でのイベントなら開催して大丈夫です。さらに、2020年8月1日からですと室内のイベントもしっかりウイルスの感染拡大防止の対策をしている場合、500人以上参加者がいても開催可能になります。
法的にはイベントなどを開催されてもOKです。ただ、実際にはほとんどイベントがなく、コンサートといった大きなイベントもいまだにキャンセルされているケースがほとんどです。図書館の読書サークルのような小規模なイベントもあまり開催されていない様子です。
レストランは営業しているのか
レストランに関しては、一時期とても厳しい制限がありましたが、今では通常営業に近い状況になっています。完全に制限が消えるのは来月の8月末になりますが、営業時間や客数などに関する制限はすでに解除されています。客が自分で料理をよそうビュッフェスタイルも再び営業できるようになりました。
客数は制限されていないとはいえ、レストランやカフェのような場所はお客のみんなに座席を用意しなければいけないというルールが設けられています。とても混んでしまう店であればバーテーブルで立って食べる人がいるかと思いますが、それは今では禁止だということです。さらに、客のために手洗いができる場所を用意する義務や、お客さんは他の客と十分な距離を保つように指示され、距離が十分に離れているかをチェックするルールもあります。レストランの清潔さを維持することや、顧客に対するコロナウイルスについての情報提供することも店経営者の義務です。
ソーシャルディスタンスや学校などはどうなのか
スーパーマーケットのようなお店に行くと店内には、「ソーシャルディスタンスを取るように」と書いてあったり、消毒液が置かれています。以前よりは気にしない人が増えた印象ですが、しっかり消毒をして、他の人との距離を保つ人の方が多いように感じます。
70代以上の方に「人と会うことを避けるように」という命令も解除されています。スーパーや図書館などでは、新型コロナウイルスが収まっている状況でも感染のリスクが高い人のための入場時間が設けられている場所が多いですが、時間帯に関係なくショッピングをしているお年寄りが増えている印象です。
学校は原則8月中旬まで夏休みになっているため制限に関するニュースはあんまり情報がありません。5月14日から通常通りの授業が許されているため、おそらく秋も今まで通りに戻ると思われます。ただし、大学はリモートワークが秋になっても継続される場所が多いそうです。
感染者数は明らかに減っている
制限が緩和されたにも関わらず、感染が拡大しているわけではありません。国内旅行をしているフィンランド人は今年に入ってとても多いですが、それでもコロナウイルスの新規陽性者数は一日に10人ほどに収まっています。フィンランドの健康機関や医療機関によると、感染者数は減少傾向にあるそうです。
それでは、なぜ感染が減っているのでしょうか。考えたことを挙げていきます。
マスクはあんまり関係ない?
新型コロナウイルスの感染拡大についての記事やニュースでよくマスクが感染予防と感染拡大対策に繋がっているのではないかという疑問が挙げられます。感染拡大を防止するためにとても良くて、誰もができる予防方法だと思いますが、フィンランドで感染が収まったことはマスクとあんまり関係ないと思っています。
なぜ関係ないというと、フィンランド人は、マスクを使う人がとても少ないからです。首都地域では使っている人も少しだけいたようですが、それでもマスクをしている人が珍しいほどだったそうです。私は首都のヘルシンキから2時間ほど離れた小さな町に暮らしていますが、コロナウイルスの感染拡大が始まったときから数ヶ月間の間で、片手の指で数えられるくらいの人数しかマスクをしている人に会ったことがありませんでした。スーパーで何回かマスク、もしくはフェイスシールドをしたお年寄りの方を見たときくらいです。
私も家族もマスクをするときはほとんどありませんでした。日本に住んでいた経験もあり「マスクをした方がいいかな」という気持ちがあったものの、手に入れることも困難だし、誰もしていないから逆に目立ってしまうのが怖いというような、バカな悩みを持っていたので、購入することすらありませんでした。私の家族は唯一マスクをしたときには、70歳以上の方と会うときでした。現在では、空気感染も疑われていますが、飛沫感染で相手に感染させてしまう可能性があるので、念のためにしていました。知り合いと話しても、70歳以上の方と一緒にいる時にいまだにしている人がいるようですが、それ以外の場面ではする人が少ないようです。
フィンランドの感染者数が落ち着いた理由には、マスクは特に大きな影響がなかったと言えると思います。ただし、病院や老人ホームというような施設ではマスク着用をしている医療従事者の方や介護ヘルパーさんがほとんどで、おそらく何人かのお年寄りや体の弱い方の命を救う役目となっていると思います。
そもそも人口密度が低い
フィンランドの面積は33.8万平方キロメートルで、人口は551万人ほどです。人口密度は16人/km2です。
この数字だけではなんとも言えませんが、日本の面積と人口で比べてみましょう。日本の面積はおよそ37.8万平方キロメートルでフィンランドよりやや大きいですね。そして、人口は1億2616万人です。日本の人口密度は1平方キロメートルにつき334.5人です。
要するに、フィンランドと日本の面積はそれほど変わらないのに人の数や密度は遥かに違います。フィンランド首都のヘルシンキでは人口密度は3058人/km²で少し多い印象ですが、東京23区だと人口密度は一平方キロメートルあたり1万5428人という比べることすらできない数値です。
人口密度が低いフィンランドでは感染がそこまで多くない理由は、単純に日本などの人口密度が高い国より人と触れ合うことが少ないからです。町の中心地のスーパーに行っても他人との距離が保ちやすく、ソーシャルディスタンスが取りやすいです。学校でもクラスの人数は日本より小さく、他の生徒と多少離れて学習できます。職場の店員の数も多くの場所では少ないので、職場内での感染拡大もある程度抑えられます。
フィンランド人は普段から他人と距離を取っている
人口密度も人との対面を少なくしていますが、フィンランド人の多くは性格的にも他人と距離を取りたがります。
フィンランドでは握手での挨拶や、最近ではハグを交わして友達と挨拶することも多いです。しかし、外国から見るほどこのような挨拶をすることが多くありません。職種によって日々握手をする人もいるかと思いますが、私の場合ではとても稀にしか人と握手をしません。さらに、コロナ禍では仕事の面接に行っても握手がなくなりました。友達や親戚とのハグも「しないようにしましょう」という人がほとんどで、人は人と触れ合うことが急激に減った印象にあります。
そして、このような他人に触れることがなくなったことで喜んだフィンランド人がびっくりするほど多いです。フィンランド人はそもそも、他人へ触れたりすることがあまり好きではない人が多いです。内気な性格の人が多くて、他人と馴れ馴れしくするのに違和感を持っています。アメリカのように気軽に世間話もしませんし、知らない人とはあまり関わりたくないフィンランド人が多いです。
びっくりする人がいるかもしれませんが、フィンランドではソーシャルディスタンスが好きな人が意外とたくさんいるのです。コロナの影響で人と触れ合えないのは悲しい人もいる反面、人と関わらなくていいことで喜んでいる人もいます。
私自身も、スーパーに行ったときに人のいる通路に行かなくていいことに少し喜んでいます。普段だったら、通路に入ろうとしたときに人がいたら気まずくなるので振り返ることができませんが、今は「ソーシャルディスタンスを取ろう!」という気持ちで他人と気持ちいい距離を保つことができます。握手などする必要がないのも嬉しいです。
健康管理への意識が高い
フィンランド人は健康への意識が高い性格の人が多いです。健康管理に関してもストイックで、最近では、ヘルシーな生活に心がけている人が増えています。フィットネスブームや自然観察ブームもある意味で良いタイミングだったと言えるでしょう。
健康管理以外にも、手洗いを入念にする習慣が身についています。公衆トイレで石鹸を使って手洗いをしないと悪い目で見られるほど、手洗いが大切だと思われています。私の友達には何年も前から常に消毒液を持ち歩いていました。
さらに、フィンランド人はコロナが出る前から咳やくしゃみのマナーに厳しいです。私も子供の頃から咳やくしゃみは手で押さえるはなく、腕に口を当ててするようにと教わってきました。
車での移動が一般的
最近では地球温暖化を理由に、車での移動を避けるために様々な対策があります。個人としても車より公共の交通機関を使うようにしているフィンランド人が多いです。しかし、コロナウイルスの感染拡大でバスや電車に乗るのが怖いですし、感染のリスクも高くなってしまうので家の車を使う人が急激に増えたそうです。
フィンランドは、車大国と言われるほど、車を持っている人が多いです。フィンランドの人口は551万人で、フィンランドで登録された車の数はなんとこの半分近くである、260万台です。車を2台以上所有している世帯が多く、フィンランド人の3割ほどは2台以上の車がある世帯となっています。そして、車を持たない世帯に住んでいるフィンランド人の割合はなんと17パーセントだけでした。
2016年の研究調査によると、フィンランド人の移動の6割も自家用車での移動です。そして、電車やバスでの公共交通手段の利用の割合はなんと10パーセント未満の7パーセントでした。
車での移動はコロナウイルスの感染拡大にどのような影響があるのかというと、他人と触れ合う機会を急激に減らすことだということです。東京などの都心部では混雑した電車で知らない人の近くで長い時間過ごさないといけませんが、フィンランドでは毎日電車やバスを使う人が少ないです。
在宅勤務ができる人が多い
どこの国もコロナウイルスで在宅勤務が多くなったかと思いますが、フィンランドでは以前から在宅勤務に慣れている人が多いです。
実は、私の父は原則的に在宅勤務です。森関連の仕事なので森に木の質などを判断するために行くことがよくありますが、事務所には行くことはほとんどありません。最近では会議もビデオ通話になっているので、1ヶ月間行かないことが普通です。
コロナ禍でこれはなぜいいのかというと、他人に会うことが減るからです。私の父の場合は森に行くことがありますが、森の中に人はいませんし、自分の車で移動しているので人と直接会うことはほとんどありません。家では仕事部屋が設けられているため、邪魔されないで仕事ができます。
在宅勤務に慣れていない国だと感染拡大が収まったら早い段階で通常のやり方に戻ってしまうことがあるかもしれませんが、フィンランドではこのような変化が見られません。コロナウイルスの感染拡大はある程度収まったとはいえ、在宅勤務が継続中の人が多いです。これも、感染が爆発的に増えなかった理由の1つかと思います。日本でもリモートワークやテレワークを取り入れる企業が増えているようですが、職種によって体制はまだ整っていないようにも思われます。
ちなみに、在宅勤務以外にも日本と働き方を比べたら大きな違いがあります。例をいうと、仕事終わりにまっすぐ帰ることが多いです。飲み会などは滅多にありませんし、あっても参加必須というわけではありません。仕事で疲れているのに飲み会なんて考えられない人が多いです。仕事じゃない時に同僚とあまり時間を過ごしたくないことも普通です。フィンランドでも仕事が大切だと思われていますが、それよりもワークライフバランスと家族との時間が大切です。
遊び場がない国がコロナに強い?
以前、日本人の友達にフィンランドには遊び場がないと言われました。ゲームセンターがなければ、日本のようなカラオケもありません。ホストクラブといった夜の街もバーやクラブ以外にありません。外食をするにも遅くまで営業しているチェーン店や居酒屋のような場所はありません。日本と比べてお店も少なく、家でご飯を食べる方が断然多いです。
私は友達と遊ぶとしたら、おそらく友達の家に行くか、外にある場所へ行きます。今年の夏は特に6月が暖かくて、ビーチや国立公園のような場所に友達とよく行きました。父のコテージにも行くことがありました。人が多く集まった室内の場所に行くことは、コロナの状況でなくてもほとんどありません。
まとめ
フィンランドでコロナウイルスの感染拡大が収まった理由をいくつか挙げました。人口密度のような理由もありますが、咳やくしゃみのマナー、働き方や人と触れ合う習慣にも理由がありますね。
フィンランド人の性格も挙げられると思います。ストイックで自分に厳しい人が多く、気が緩まないように外出自粛期間を耐えてきた人が多いです。もしかしたらフィンランド人の「sisu(シス)」、不屈精神や忍耐力が最も大切な理由だったかもしれません。
世界では、まだまだ感染拡大が止まっていません。1日でも早くワクチンや治療薬が見つかり収束、完全に終息することを願っています。
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