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先日、フィンランドの大学入試を受けたのですが、新型コロナウイルスの影響で今年はオンライン試験となりました。ですが、これで入学を決めちゃっていいの!という驚きの状況となっています。
最近では、新型コロナウイルスの感染拡大で多くの国の生活様式が変わってきています。北欧のフィンランドも平年と全く違うことが多く、毎年春や夏の初めに行われる大学の入学試験も大きく変わりました。多くの大学の入試をどこからでも受けられるインターネット試験を行って合否判定が決定されるようになりました。
しかし、家からでもできるインターネット試験ではカンニングもやり放題ではないでしょうか。ネット上でどのように管理しているのかということも疑問ですよね。
このような質問に答えながら自身で経験した大学の入学試験について説明していきます。
大学の種類や選考によって試験が違う
本題に入る前に、フィンランドの大学システムについて少しだけ説明しなければなりません。
フィンランドでの大学は、大きく分けて2種類あります。1つは日本の大学のような「ユリオピスト(yliopisto)」です。この種類では通常の授業よりも講義が多くて、おそらく日本人が思うような大学だと思います。なのでここからは「伝統的な大学」と呼ぶことにします。そしてもう1つは「ammattikorkeakoulu」です。大学と専門学校を統合したような、仕事を重視する場所なのでこちらは、「専門大学」という言葉を使っていきます。
今年は、コロナウィルスで大学の入学試験はどう変わったのかというと、特に伝統的な大学の試験を受けた人にとって変化が多かったです。今年度幅広く使われた入学試験は、コロナウイルスがなくても専門大学の試験として使われる予定でしたが、この感染症の影響で普段では使われていない伝統的な大学の入学基準としても採用されるようになりました。専門大学の入学方法には、変わりなく通常通りということになりました。
唯一違うことは、コロナの状況がなかった家からではなく学校へ行って受けるようになっていました。
これに対して、専門大学同様の試験を今年初めて導入した伝統的な大学の試験は予想外なほどに、いつもと変わってしまいました。専門大学のインターネット試験は高校で習ったことを幅広い分野に関して試されますが、伝統的な大学の試験は分野や学部によって様々です。
例えば、心理学の入学試験は統計数学がメインになっています。私が勉強した日本語学は世界の歴史の定められた本とフィンランド語の文法の本を丸暗記しなければいけませんでした。
もっと詳しく説明したら本題からあまりにもずれてしまいますが、要するに伝統的な大学に入ろうとしてた人はこの春、びっくりした人がとても多かったのです。1年間決まった試験内容に沿って勉強した人が多かったので、その努力が無駄になったということになってしまいます。
どこからでも受けられるインターネット試験
今年の大学の入学試験はインターネットで受けられる試験だったので、基本的にはどこからでも受けられました。家でも図書館でも、海辺のビーチでもオッケーということです。パソコンやインターネット接続環境さえ整っていれば、どこからも受けることが可能な試験でした。
ただ、唯一の条件は「1人で試験を行なってください。」ということでした。もちろん人から助けをもらってはいけません。
ですが、「本人が受けているのをどうやって確認するの?」という疑問が浮かぶと思います。
この疑問に関して詳しく説明します。
まず、試験にログインするリンクは個人のメールアドレスに試験の数日前に届きました。独自の開始時間も書いてありました。サーバーが混雑しないように、14〜16時までの間で段階的に試験に入る時間が決められていました。1分単位での時間でしたが、早めに開いたら順番待ちの画面になるのでぴったりの時間に開かなくても大丈夫でした。
そして、自分の順番になると本人確認へ進みます。銀行口座へのログインで行う個人認証、もしくはフィンランド人の全員が持っている個人番号を入力して試験に入るシステムになっていました。個人認証ができなかったら試験の開始をすることができず、受けることもできません。このシステムがあるので、他の人の代わりに試験を受けることはできません。
第2ステージの導入でカンニングを無意味に
本人確認や個人のためのリンクがあると言っても、実際のところカンニングをしたければ簡単にできてしまいます。受験する人の個人番号さえ知っていれば他の人の代わりに試験を受けられますし、隣に友達や親が手伝っていても大学側には分かりません。
試験はクッキー(Cookie)で何をやっているか観察するシステムになっていましたが、クッキーでも何もかも観察することができないですし、スマートフォンや自分が持っている他のタブレット端末などで調べることだってできてしまいます。
カンニング行為を抑制するために試験の時間がとても短くなっていますが、それでもカンニングをゼロにはできません。このため、ほとんどの入学試験は第2ステージを作りました。インターネット試験で一番いい点数を取った人は次のステージに進みます。
第2ステージは大学や選考によって異なりますが、専門大学の場合は大学に行って、管理された部屋で再び同じような試験を受けるのだそうです。これで、元々自分で受けていない場合は点数がひどく落ちますのでカンニングもばれてしまいますね。もちろん、それだけではカンニングしたという証拠にはなりませんが、点数で不合格になってしまいます。他にも、ビデオ通話で受ける試験などが用意されています。
実際試験を受けてどうだった?
私は心理学の入学試験を受けました。心理学の試験といっても、他の大学の試験内容とほとんど変わらないのですが、質問の分野が少しだけ変わります。
試験は6種類に分かれていました。選考に関係なく受ける種類は次の3つです。
- 意思決定力・20分
- 母国語(フィンランド語、もしくはスウェーデン語)・20分
- 英語・15分
さらに、応募する専攻科目や大学によって次の3つの中で受けるものが選択されました。心理学の場合は全部を受ける必要がありました。
- 数学・30分
- 数学と自然科学・30分
- 倫理学・10分
では、試験自体はどうだったのでしょうか。
実は、最初からとても緊張していました。家から受けることができるのでストレスは緩和されると思ってしまうがちですが、私の場合はそうではなかったです。試験に入る前から不安でいっぱいでした。個人認証のボタンを押しても前に進まないし、ログインしようとたら画面が何度も固まってしまいました。試験開始時間が迫っているのに、クリックしても何も動かず、白い画面を見る状況で、質問をまだ見ていないのに緊張で指が震えていました。
好きな音楽をかけることが唯一のストレス解消になりましたが、やはりパソコンをwi-fiに接続した環境に頼ることが怖いと感じました。6万2000人以上が参加した試験なのでサーバーの問題があるのも当然のことです。
試験自体はそれほど難しいものではありませんでした。高校でしっかり勉強してきた人だったらおそらく問題なく良い点数が取れると思います。私の場合は高校を卒業してから10年近く経ってしまったので数学を復習していなかったらとても悪い点数になっていたと思いますが。
意外と難しかったのは、英語と倫理学です。フィンランド人の英語力が高いからでしょうか。
とても難しい問題が並んでいました。15分で長文を2つも読む上に、聞いたこともない言葉の類語を選択しなければいけないなど、びっくりするほど高レベルの英語でした。具体的な内容は言えませんが、おそらく英語圏の人も知らない言葉があったと思います。
そして、倫理学は正直にいうと訳がわからなかったです。(笑)昨日点数が発表されたので10点のうち7点が取れたと知っていますが、何が合っていて何が間違っていたのかは、いまだに分かりません。ネットの掲示板を見ても、理解できなかった人が多かったようです。
検索していい?電卓はOK?試験が終わっても不明なことが多い
どこにいても受けられるインターネット試験なので、もちろん検索もできれば、教科書をいくら使ってもばれません。しかし、ルール的には何がオッケーなのでしょうか。
実は、試験の前に大学の試験を紹介するサイトに書かれたルールには教科書やインターネット検索などについて一言も書かれていませんでした。後から何度も読み直しましたが、規約など一切書いてありませんでした。
唯一書いてあることは次の文章です。
「試験は独自で受けてください。独自で受けない場合、カンニングとみなします。カンニングが発覚された場合には、法律によって不合格になります。」
要するに、1人で受ければオッケーということになります。親や兄弟、友達などに手伝ってもらうのは禁止されていました。しかし、グーグル検索については一切書かれていません。教科書や数学のテストに役に立つ計算機についても一言も見当たりませんでした。
一体どういうことでしょうか?
実は、試験を開いた時にさらにルールが書いてあったようです。ただ、私を含めて多くの人が気づかなかったと思います。なぜなら、規約がものすごく小さく書いてあったからです。この試験の中に隠されたルールの中には「試験で許されいる書類以外は使っていけない。」「他のWebページを使っていけない。」「計算機はダメ。」なども書いてありました。
そして、「カンニングをした場合、今年大学進学への権利を失います。」とも書いてありました。こんなルールは隠さないで、もっと明らかなところで大きく書いた方がいいかと思います。
なぜこのようなことを言うかというとフィンランドの試験では、計算機を使ったり、調べていい試験があったりするのです。試験内容が難しすぎるので、使っても意味ない場合が多かったりします。
これで大学進学を決めていいのか
就職や将来の人生に大きく関係する大学進学をインターネット試験で決めていいのかというのは悩みどころですね。時間帯や環境によっては、システムがダウンしてしまったり、家のインターネット接続が切れてしまったりしたら不合格になる可能性が高くなります。カンニングもばれにくく、子供の代わりに親がやっても第一ステージは合格してしまったりします。第2審査のためにさらに試験を受けなければならない場合には、二度手間とも考えられるでしょう。
さらに、ルールには不明な点が多く、試験が終わってからもカンニングに当てはまるものが何なのか明確になっていません。
家からできるので大学への交通費などで節約にはなりますが、家の経済事情によっても学生の間で差がついてしまいます。家にパソコンやタブレット端末がなければ試験を受けることはできませんし、時間制限が厳しいためインターネット接続が悪い人は不利です。
フィンランドでは大学の選考科目がとても重要になっているので、大学に入ることが人の将来に大きく影響します。インターネット試験は、現在の状況を考えたら適した方法と言えるのかもしれませんが、まだまだ改善点は多いのが現状です。フィンランドのインターネット環境は世界トップレベルなのでその点ではいいかもしれません。
さいごに
フィンランドの大学入試を受けてみましたが、今年はオンラインでの試験となりました。インターネットを利用した試験は、メリットもありますが、デメリットもあります。
カンニング対策として二次選考があるので、一次試験の必要性は疑問であるかもしれません。パソコンやインターネットに接続する環境がない人は購入をしたり、契約をしなければなりませんね。まだまだ色々な課題点はありそうです。
このような試験に、皆様はどう思いますか?
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