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フィンランドのお酒事情と文化!アルコール消費削減に必死な政府

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「フィンランドでは酒税が高くて強いお酒が買えない!」という文章を目にしたことがあります。実際フィンランドでは、お酒への考え方はかなり複雑です。この記事では、フィンランドのお酒に関するルールや習慣、問題や考え方を詳しく説明します。日本の方にとってはびっくりするものもあるかもしれません。この記事を通して、アルコールの消費を必死に制限しようとするフィンランド政府の政策が見えてくると思います。

お酒の販売は9時から21時まで

フィンランドに行ったことがある人は、経験したことがあるかもしれません。。夜22時にホテルでくつろいでいて、ビールを飲みたいなあと思い、近くのコンビニに向かいます。ビールを買おうとすると、ビールの棚はカーテンで隠れていて、手に取ることもできません。

これは、フィンランドのスーパーやコンビニで日々見かける光景です。21時になるとお酒の棚はカーテンのようなもので隠される、もしくはコーナー自体が閉鎖されます。21時過ぎに万一レジまでお酒を持ち込むことができたとしても、販売してくれません。

では、20時55分のようなギリギリの時間に着いた場合、すぐにお酒をとって払わないといけないでしょうか?公式なルールとして、21時以前にお酒を手に取った場合は買うことができます。要するに、21時前にお酒をカートに入れていたらその後店をゆっくり回ってもオッケーということです。

ただし、21時の前に手に取ったことを証明できない場合、店側は販売することができません。例えば、20時55分にお酒をカートに入れたとしても、22時にレジに向かった場合、厄介ごとになる可能性が高いでしょう。

ちなみに、お菓子でもアルコール度数は2、8パーセント以上だとお酒と同じ制限が該当しますのでお気をつけください!

強いお酒はお酒の専門店のアルコでしか販売しない

これもフィンランド旅行で気づくと思いますが、スーパーやコンビニでいくら探してもアルコール度数は5.5パーセントより高いお酒やスピリッツは見つかりません。なぜなら、5.5パーセントより高いお酒は、普通の店で売ってはいけないからです。

では、5.5パーセントより高いお酒がどこで買えるでしょうか?このようなお酒は、フィンランド内では「Alko」(アルコ)という店が独占しています。買いたい方は必ずAlkoに行きましょう。

アルコの独占はフィンランドのメディアでよく批判されます。いまだに独占的な立場を持った店があっていいのか?ということがよく疑問視されます。環境問題に熱心な緑の党は、2022年5月に、アルコール度数が15.5パーセント以下のお酒は食料品店でも売っていいようにすることを党の目標の1つとして発表しました。(環境問題には全く関係ないですが笑)。

年齢制限は少しややこしい

日本だと最近成人年齢が引き下げられましたが、お酒の年齢制限は変わらず20歳ですね。フィンランドでは、成人年齢が18歳で、18歳からお酒を買うことが可能です。

しかし、お酒を買えると言っても何でも買えるというわけではありません。20歳になっていなければ、「マイルド」なお酒しか買えません。ここでのマイルドは、アルコール度数が22パーセント以下のものをさします。22パーセントよりも高い度数の場合、20歳になってからでないと買えません。

年齢確認(ネンカク)される可能性が高い

私は最近、フィンランド旅行に来てくれる日本人の夫とよくお酒を買います。どこかに行った後の帰り道や買い物がてらに買うことが多いので、家を出るときに「今日はお酒買おう」と意識してから買うということはあまりないです。しかし、このせいで何回かお酒を買えないとい状況が発生しました!

フィンランドでは、30歳以下に見えるお客さんには、年齢を確認するようにと推薦されています。ほとんどのスーパーやコンビニの店員はこのルールに沿って、少しでも疑いがあれば写真付き身分証明証が要求されます。

もちろん、実際の場合年齢確認されない場合もあります。私は基本的に聞かれますが、聞かれない時もたまにあります。さらに、夫と出かけているとほぼ必ず聞かれますが、例外もあります。

ちなみに、お酒を払う人だけが成人だというだけでは足りないケースが多いです。小さい子供ならばともかく、一緒にいる人にもそのお酒を渡すという疑いが少しでもありえるなら、年齢確認されます。例えば15歳くらいの子供と一緒だと買えない可能性が高いです。

事例として、私は以前、お酒を基本的に飲まない姉とアルコに買い物に行ったことがあります。ショッピングがてらで姉が付き合ってくれただけで、お酒は私の友達と後日飲む予定でした。しかし、レジに行くともちろん私だけでなく、姉にも身分証明証を見せるように要求されました。姉はこのせいで、「私は飲まないのに!」と少し不機嫌になってしまいました。

ということで、お酒が好きでしたらフィンランド旅行などの時は常にパスポートなどの身分証明証を持ち歩くことをおすすめします。レストランやバーでも年齢確認されることが多いので、忘れないで持ち歩きましょう。

ほんとうに、日本の方からすると、びっくりするほどネンカクされます。私の夫は、日本ではネンカクされると「若く見えるかな?」と嬉しくなるそうですが、フィンランドではあまり関係ありません。笑

お酒も酒税も高い

正直に言って、フィンランドのお酒は高いという言葉で足りないほどめちゃくちゃ高いです。

フィンランドは、EUの中で一番お酒が高いと言われています。2020年の研究によると、EUの平均よりも91%(!) も高いです。というのも、税金はもちろん、お酒の値段も高く設定されているからです。酒税の制度が複雑なので消費税のように簡単に割合を述べるのが難しいですが、下記にいくつかの点を挙げるのでイメージがつかめると思います。

  • 酒税はお酒の値段ではなく、アルコールの量で決まります。例えば、ビールは100%のアルコール10mlにつき、38,05セントの税がつきます。
  • アルコール度数によって税が高くなります。強いお酒だと、100%のアルコール10mlにつき50,35セントの税がつきます。

ちょっと計算しにくいのですが、高いということは伝わるでしょうか?私の夫はお酒が好きなのですが、フィンランドのお酒となると、空港の免税店で、もしくは日本で買った方がいいと言っています。

フィンランド人はよく、わざわざ隣国エストニアのタリンにお酒を買いに行きますが、これで理由がわかったと思います。(私は一回も行ったことがないので、あまり経験を語れないですが。)

お酒のイメージは複雑

酒税やお酒の値段の高さにはちゃんと理由があります。フィンランドでは、お酒に関係する健康問題がとても多いのです。

フィンランドの国民病(がん、心血管疾患、糖尿病、呼吸器疾患)のもっとも大きな原因はお酒だと言われています。アルコール依存症自体が国民病とされていて、およそ5〜10パーセントのフィンランド人がこの病気を抱えているそうです。

フィンランド政府は、主に酒税を引き上げることでお酒の消費を少なくしようとしています。実際にこの作戦は効果的だったことが証明されています。2004年に酒税が引き下げられて、そして同時にお酒を手に入れやすくされました。これにより、お酒の消費が記録的な数字に上がってしまいました。これを機に、2007年から酒税は頻繁に引き上げられていて、この間のお酒消費の統計を見ると、消費が明らかに低下傾向にあることがわかります。

このような健康被害は、フィンランド人のお酒への考え方に影響されているでしょう。中央ヨーロッパのフランスのような国々では、毎日ワインを飲んだりするのも一般的です。しかし、フィンランドで毎日お酒を飲んでいると言うと、飲み過ぎ、アル中だと判断されてしまう可能性さえあります。お酒は適度に、と言う考え方が強く、この「適度」の意味は量よりも頻度を指すようです。毎日飲んでいたら量に関係なくアウトだと言う考え方を持っている人が多い気がします。これは日本とは少し違う考え方かもしれませんね。

夏だと、なんとなく例外です。テラス席でお酒が飲める店が多くて、仕事終わりに一杯の人も増えます。ただ、今年の夏もニュースサイトで何個も「いくら夏でも毎日お酒飲むのは良くない」というような記事を見かけました。さらに、フィンランドの夏至祭(ユハヌス)などになると、酔っ払って溺れる人が毎年多いので、お酒への悪い印象が強調されるのも当然でしょう。

一方で、お酒を飲まない人は楽しくない、お酒を飲まないと楽しめられないと言う考え方もあります

お酒の印象がある程度悪くても、その悪い印象を冗談にして、酔いつぶれるまで飲もうと言うような考え方も珍しいものではありません。毎日は飲まないからこそ、飲むときはちゃんと飲もうと言うような考え方もあります。

私は、今はお酒を美味しくいただくことがありますが、若い頃は少し違っていました。例えば、未成年の頃はもちろん飲みませんでした。私にとってこれは当たり前でしたが、飲まない人はつまらない人という扱いをされたことが何回もありました。18歳になってお酒を飲むようになって初めて、高校の同級生グループの一員に認めてもらえた気がしました。

さらに、大学時代もあまりお酒を飲んでいなかったのですが、かなり頑張らないと友達作りが難しいという感じでした。パーティーに行かないと仲間はずれにされるし、行ったとしても自分だけシラフで酔っ払いとの会話になかなか同じテンションで参加できません。このような経験はメディアの記事やブログでもたくさん指摘されています。大学の専攻によっては、ほぼ無理やり飲まされるということもあるそうです。

ちなみに、大学ではお酒の印象がいいと言われても、そこまでよくはないとも言えます。1人で家で飲めばアル中と判断されてしまうことがあるし、一緒にパーティーする時にも、お酒の健康被害についてのブラックジョークは飛び交うことがあります。要するに、フィンランドでのお酒のイメージはアンビバレント(両面的)で、とても複雑です。

お酒の広告にも様々な制限がある

お酒については、酒税やお酒の販売だけでなく、広告の制限もされています。フィンランドでは、1977年から強いお酒の広告が完全に禁止されています。20歳以下の人は買っていけないアルコール度数が22%以上のお酒だと、どこにも広告をしていけません。

これより弱いお酒も一時的には広告禁止という状態でしたが、1995年に制限付きで広告オッケーになりました。2015年にこの法律の制限はさらに厳しくなりました。以下のような感じです。

  • 公共の場では基本的に広告をしていけない。例えばバス停などの広告だと、未成年の人にも見ることができるのでしてはいけないとされています。
  • テレビやラジオでは7時と22時の間に広告禁止。
  • 映画館では未成年が入っていい映画だと、広告禁止
  • お酒の広告にゲームや懸賞などを使用してはいけない。要するに、(日本のように)懸賞応募でビールが当たるというようなことはありえません。

他にも、広告の内容などについて制限があります。広告では、お酒がソーシャルもしくはセクシャルな能力、成功を増やすイメージを与えてはいけません。例えば、お酒を飲むと友達関係がうまくいくとか、交際関係が気付きやすいとかというようなイメージを与えてはいけません。さらに、お酒を飲むことで元気が出る、疲れが取れる、悩みが解決される、落ち着く、などというようなイメージも広告で出してはいけないです。

SNSでの広告にも制限がたくさんあります。上のような制限以外に、消費者の投稿を広告として使用していけないことや、消費者にシェアしてもらうこともダメです。要するに、お酒のブランドがインスタグラムなどで活動している場合には、シェア不可にしないといけないというルールがあります。お酒の広告については、日本では考えられないくらい厳しい制限が課されているのですね。

フィンランドでも「Alcorexia」(アルコレクシア)という問題が存在する

全体的にはマイナーな問題かもしれませんが、特に若い人の中では「アルコレクシア」が問題になっています。拒食症を意味する「anorexia」に由来する言葉です。お酒はカロリーが高いので、お酒を飲む前に何も食べないことに起因する拒食の症候群です。何も食べないと少ない量で酔いやすいので、実際飲む量も減るし、事前に食べていたはずのご飯のカロリーもゼロなのでカロリーを少なく抑えられると言う考え方だそうです。空きっ腹に飲もうというあまり、十分にご飯を食べなくなってしまうという症状ですね。

このようなものはアメリカなどでも問題視されていますが、フィンランドでは痩せるためにやる人以外に、お金の節約のためにやる人も多いです。男女ともに、できるだけ安く酔えるように、飲む前に食べないと言う習慣がある程度若者の中で流行っているそうです。

このような飲み方ではお酒の健康被害の確率が高まりますし、何よりとても危険な飲み方なので対処すべき問題ですね。

最近お酒を一切飲まない人も増えている

近年、特に若者の間では「absolutismi」(絶対禁酒主義)が流行っています。カクテルのようでお酒が入っていないモクテルの人気も上昇しているし、アルコなど販売されているお酒が入っていないビールやワインなどの販売数も上昇しているそうです。

原因はいくつかあげられます。お酒の値段や酒税、健康意識など影響しているでしょう。そして、特に若い人の間で流行った現象として「sober curious」(ソバー・キュリアス 注:「シラフでいいんじゃない?」という感じの言葉です)があげられます。国際的な現象で、今までに慣れたお酒の習慣を疑問視するものです。お酒を飲むのが当たり前だった場面でもあえてお酒を飲まないという選択肢を取る、というようなことを推進する現象です。フィンランドでもソバーキュリアスが流行っています。

さいごに

この記事では、フィンランドのお酒事情について説明しました。健康被害を抑えるために、酒税もお酒の値段も高く設定されています。そして、フィンランド人のお酒への考え方は健康被害などのネガティブなイメージとともに、お酒飲むと楽しいというようなイメージが混ざりあっていて、とても複雑な感じです。

実際のところ、どんな考え方やどんなお酒の飲み方が正しいのか、酒税で飲酒を制限するのがいいのか、わからないです。この記事ではあくまでも様々な考えや知識を書いただけであって、私の個人的な意見は書かないようにしました。フィンランドでのお酒に対する一般的な理解がみなさまに伝わり、お酒について考え直す機会になれば嬉しいです!

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